ブリヂストン美術館 カイユボット展ブログ

~写真家Mの視点によるカイユボットの魅力~

プティ・ジュヌヴィリエのカイユボット

「カイユボット展」の絵の中で、ヒマワリが印象的な大きな絵があります。

 

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《向日葵、プティ・ジュヌヴィリエの庭》

 

花にかかる影の雰囲気などがリアルで、ちょっと遠くから見ると写真のようにも見える絵です。ヒマワリの後ろに描かれているのは、カイユボットが郊外プティ・ジュヌヴィリエに買った彼の邸宅です。彼はここに1888年から住んでいました。

 

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今年、カイユボットの足跡を追ってパリに行った時、郊外のプティ・ジュヌヴィリエにも行ってきました。現在も当時と同時代のものと思われる家が一部だけ残っています。このジュヌヴィリエには、印象派の画家仲間のマネの一族も先祖代々住んでいたそうです。セーヌ川をはさんで、対岸はアルジャントゥイユ。そこにはモネが住んでいました。モネはマネとも友人だったので、アルジャントゥイユに家を探してもらったそうです。彼らは川を行き来して、カイユボットの家にも遊びに行ったことでしょうね。まさに印象派の画家たちの故郷のような場所です。

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左がプティ・ジュヌヴィリエ岸で右がアルジャントゥイユ岸。

 

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カイユボットは後年、ヨットレースに夢中になり、自分で設計するほどの熱の入れようだったのですが、ここにヨットの造船所があり、ヨットレースが行われていたとか。川には、カイユボットが描いた橋もしっかり残っていました。その橋の上に立つと、アルジャントゥイユ、プティ・ジュヌヴィリエ両方の街が一望できます。カイユボットやモネたちはこの橋をきっと行き来していたんだろうなと思うと感慨深かったです。また、約3年前には、川に浮かべてある船の上で、マルシャルが作曲した曲を演奏する音楽会が開催されたそうです。

 

プティ・ジュヌヴィリエ市の市役所に勤めるゴネリー・リブーバンさんに会ってカイユボットについての話を聞いてきました。カイユボットは、プティ・ジュヌヴィリエで絵を描いたりヨットレースにいそしんでいたばかりではなく、1888年から1893年までプティ・ジュヌヴィリエ市の議員も務めていたそうです。鉄道などの技術部門やお祭りなどの祭事を担当していました。

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(現在のプティ・ジュヌヴィリエ)

 

市に勤務している間、カイユボットはなんと、市の道路工事の資金を個人的に出してあげたりしたとか。それがきっかけで自動車産業が発展し、外国人の移民が増えたそうです。彼が援助したのは、印象派の画家だけじゃなかったんですね。フィランソロフィック(篤志的)というか、社会や文化に対して利他的な心がある人だったんだろうなとつくづく思います。現代で似たような人を探すとしたら、さて誰でしょうね?

photos:©Mayumi Ishii