カイユボット展がスタートして1ヶ月。先日、ブリヂストン美術館を再訪したところ、チケット売り場に列ができるくらい多くの人々がいて、とても盛況の様子でした。
あらためてじっくりと作品を見て、まさに都市の印象派だな、と思った絵はこれです。
《建物のペンキ塗り》(1877年)個人蔵 ©Private collection
この絵はカイユボットが第3回印象派展に出品した作品です。ブリヂストン美術館に展示中の《ヨーロッパ橋》《マルシャル・カイユボット夫人の肖像》と一緒に出品されました。
建物や整備された道路など、直線が支配的に多い風景は、東京にも共通して、近代的な都市を象徴する印象があります。その点でこの絵は、旧市街にない真っすぐな広い道路など、当時急速に近代化しつつあったパリの町を象徴しているように見えます。
また、この絵についての美術館の解説に「われわれが日常的に経験する構図の面白さの発見を喚起しているのでは」とあり、なるほどと思ったと同時に、その視点が写真にも共通していると思いました。写真を撮る時も、カメラのファインダーを通して目の前にあるものの光や構図の面白さを探しますが、都市の光景では直線の強いラインが作るアングルにグラフィックな面白さが見つかることが多いです。特に広角レンズで。
《建物のペンキ塗り》の絵も、広角レンズで見たような、遠くまで続くまっすぐな道路建物、そしてペンキ塗りの脚立が強いラインを作っています。そこに曲線的な人物が描写され、効果的なポイントに。カイユボットは、古いパリとは違う直線的な都市の風景に面白さを感じて絵を描いたのかも?と思いました。そして、それはきっと当時、斬新な視点だったのでしょうね。
ペンキ塗りの人々の服装やたたずまいからは、当時の労働者の雰囲気が伝わってきますね。そういう意味でこの作品は、当時の時代をさまざまに表現するドキュメンタリー写真のような雰囲気を醸していて面白いです。
会場にはカイユボットの弟、マルシャル・カイユボットが撮影した写真もたくさん展示されています。その中から「労働者」と題された写真を見つけました。
©Private collection
右:《街路灯から降りる(コンコルド橋)、1891年12月》
左:《凱旋門の修理現場で働く労働者たち、 1892年2月》
大きな脚立や労働者を被写体としているところが《建物のペンキ塗り》に共通していますね。カイユボットが絵を描いたのは1877年。マルシャルが写真を撮ったのは1891年。もしかすると、カイユボットが描いた脚立の絵からヒントを得た可能性も?そんな風にカイユボット兄弟の絵と写真を比べながら展覧会を見ると、またとても面白いです。
ところで、はてなブログのお題キャンペーン「芸術の秋」が昨日(11/13)締め切りになりました。たくさんのエントリーをいただいたそうです!なので、選出に1週間ほどかかるそうなのでもうしばらくお待ちくださいね。