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ブリヂストン美術館 カイユボット展ブログ

~写真家Mの視点によるカイユボットの魅力~

オルセーの学芸員さんが語るカイユボット 〜パリ8区を描く

パリのオルセー美術館には、カイユボットの作品が5点あります。前回のブログで紹介した《床削り》もその中の一点です。オルセーに取材に行った時は、この作品も展示してありました。

 

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                                                                       撮影: © Mayumi Ishii

  《アンリ・コルディエの肖像》1883年  

アンリ・コルディエ(1849-1925)はフランス人の東洋学者。カイユボットと1歳違いの友人だったようです。後ろ姿をさりげなくスケッチした風のポートレート。よく見ると、左ひじの位置に比べて机の高さがちょっと不自然?

 

オルセーでは、美術館の19世紀フランス絵画担当学芸員であり、カイユボットの研究をしているグザヴィエ・レイさんに話を聞きました。

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 《床削り》とオルセー美術館、19世紀フランス絵画担当学芸員のグザヴィエ・レイさん

 

カイユボットについて「革新的な目を持つ画家」と評するレイさんは、カイユボットは独学で絵を学んだので、ほかの画家に比べ、西洋絵画の伝統に縛られない作風だったのでは言います。

 

カイユボットはパリで一番モダンな8地区を描いた

 

 ― 19世紀はパリの都市文化が花開いて、画家も都市を描きましたが、カイユボットのように8区だけを集中的に描いた画家は珍しいのではないでしょうか?

 

レイさん「印象派の画家たちは新しい描き方を生み出しましたが、テーマも新しくなくてはならなかった。ですから、みな新しいテーマを競うように探していたのです。ドガはオペラ座のバレエの舞台、モネはサン=ラザール駅を描きました。当時のナポレオン三世の時代には、どんどんパリの道を壊して新しく、という形で近代化が進みましたが、その具現化が最も顕著に見られた場所が8区でした。8区は一番モダンな界隈だったわけで、それを選んだカイユボットは一番モダンな画家であったと言えると思います」。

 

パリ8区は、カイユボットが若い頃に住んでいた地区でもあります。このブログでも紹介した《ヨーロッパ橋》や《パリの通り、雨》をはじめ、《ペピニエール兵舎》も8区が被写体です。

 

また、自宅の室内で描いたとされる下記の作品などもことごとく8区です。後に彼が引っ越して住んだ家も、オペラ座の裏手、8区隣の9区でした。カイユボットが「都市の印象派」と呼ばれるのはそのせいでもあるのですね。

 

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《ピアノを弾く若い男》1876年 石橋財団ブリヂストン美術館

モデルはカイユボットの弟のマルシャル。第2回印象派展に出品して注目された作品です。壁や床の装飾模様、カーテンなどのディテールのほか、光沢、ピアノに写る手や部屋の反射など、光の作用に敏感=写真家的な目だなと思うのです。

 

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《昼食》1876年 個人蔵 (c)Private Collection

カイユボットの母と弟ルネの食事風景。執事がいる雰囲気や調度品からカイユボットの豊かな暮らしぶりがうかがえると評されている作品。ガラスの器がたくさん描かれていることが気になります。きっとカイユボットは、逆光を受けたガラスの質感の面白さに魅かれたのではないかな?

上記2作品は、ブリヂストン美術館のカイユボット展に展示される予定なので、じっくりと鑑賞するチャンスです。

 

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 パリ8区、メロメニル通り77番地に今も残るカイユボットの家。事業で財をなした父親が建てた丸ごと一軒。ここの室内で上記の絵が描かれたと思うと感慨深いです。

 

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 カイユボットが住んでいたことを示す石盤が建物の外壁に

 

 ―カイユボットの作品には写真風な構図のものも残されていますが、例えば、写真を見ながら描いたのではないかというような資料は残っていますか?

 

レイさん「写真は残っていません。彼には写真的な視点がありましたが、何かモデルとなる写真を見て描いたということはないと思います」。

 

―カイユボット自身も写真を撮っていたと思いますか?

 

レイさん「弟がカメラを持っていましたから、カイユボットも写真を撮ったと思います。でも、覚えておきたいのは、彼は写真家にならず、画家のままだったことです」。

 

カイユボットの弟、マルシャル・カイユボットはパリの写真を撮っていた人で、現在、写真家としての評価も進んでいるそうです。兄弟で芸術的に影響を与え合ったのではと察せられますが、ブリヂストン美術館の回顧展では、マルシャルの写真作品も展示される予定なので楽しみです。

 

レイさんもほかのファンと同じように、カイユボットの革新的でモダンな視点、作風を愛しているようでした。レイさんの詳しいインタビューは、ブリヂストン美術館のカイユボット展オフィシャルサイトに今後アップされる予定ですので、チェックしてみて下さいね。

ブリヂストン美術館のカイユボット展オフィシャルサイト

 http://www.bridgestone-museum.gr.jp/caillebotte/